何か出来事があった時、人によって前向きに考える人もいれば、その出来事から立ち直れないと感じてしまう人もいます。
この違いはどこから来るのでしょうか?

人はそれぞれ異なった自分や他人、社会に対する判断基準を持っています。
これをスキーマと呼びます。

人が育った環境や経験によって全く違うのですが、さまざまな出来事をスキーマを通して認識し、それと合致するような結論を出そうとします
カウンセリングのポイント例えば、「自分は人から愛されない」というスキーマを持っていた場合、他人からとても好意的な態度を取られた場合、「きっと立場上ああするしかなかったんだ」と言った具合にその出来事を割り引いて考え、記憶から除外してしまいます。

そして、他人から冷たい態度を取られたりすると「やっぱり私は愛されないんだ」と自分のスキーマが証明されたように感じ、その記憶を蓄え、さらにそのスキーマを強めていきます。

ですから、いつも同じようなことを考え、その考えに見合った行動をとってしまうのです。

自分の考えを見直す場合、「自分がなぜそんな風に思ったのか?」という理由を理解する(その時の思考の元になったスキーマやそこから派生したルール)ことが役に立ちます。

下向き矢印法

その時に役立つのが下向き矢印法です。
その出来事について具体的に書き込み、最終的にどう考えたのかを書き出してみましょう。

その後、以下の質問に答えながら一段深い自分の心を探ってみてください。

  • 私が悩むのは、それによって~と考えるからだ
  • もしそれが本当のことになったら、その後何がおきるでしょう?
  • もしそうなったとして、それは貴方にとって何を意味するのでしょう?
  • 何故その事が、問題になるのでしょう?
  • そうなったとして、どんな事が起きるでしょうか?
  • 貴方は何故、その事についてそんなに悩むのですか?
  • それからどうなりますか?

『状況1』

Aさんにあいさつをしたら返事もせず行ってしまった。

『質問に答えていきましょう』
Aさんは私を嫌いなんだ → 私を嫌いじゃなかったら挨拶を返すはず → Aさんのお友達、Bさん、Cさん、Dさんにも私は嫌われているかもしれない→職場の人たちにみんなに嫌われているかもしれない → 一人ぼっちになってしまうかも → 私は人から愛されない

上記の例では、「私は人から愛されない」というスキーマがあるため、「Aさんがあいさつを返さなかった」という事実を「Aさんは私を嫌いなんだ」という思考に結びつけてしまっているのです。

もし、「私はみんなに愛されている」というスキーマを持っていたら、きっとこれ以外の思考を導き出しているはずです。
(聞こえなかったかな?、何か家で嫌なことがあったのかな?、考え事でもあったのかな?etc)

この例では、

  • スキーマ:私は愛されない」
  • ルール:相手の行動はそのまま気持ちを表している
  • 自動思考:Aさんは私を嫌いなんだ

となっているようです。

こんな風に、自分のスキーマやルールを理解できると、スキーマやルールに反する事実を探すことが可能となり、自分にとってうまく機能していないスキーマやルールを調整する基盤をつくることができます。

認知行動療法-下向き矢印法

認知行動療法で使う下向き矢印法の記入例

また、不安や心配などを分析するのにも使えます。

『状況』

旅行へ行く前に妻が容易に手間取りイライラして怒りが抑えられない(実際は少し時間に余裕があります)

『質問に答えてみましょう』
このままだったら遅刻してしまう → 車が渋滞してたら時間がかかる(30%) → 電車に乗り遅れてしまう(10%) → 待ち合わせの〇〇ご夫妻はきっと先に来てイライラしているだろう(10%) → そんな私たちを見たらきっと軽蔑するだろう(5%) → 時間を守れない人間はダメな人間だと思われるに違いない(20%) → これからもダメな人間だと思われて過ごさなくてはいけない(30%) → 人から見下されて生きていくことなんかできない (カッコ内は発生確率)
このままの状況で人から見下されていかなくてはならない確率は、0.3×0.1×0.1×0.05×0.2×0.3=0.000009 0.0009%となります。

1つの思考が生まれるまでにいくつかの思考が組み合わさっている場合は、その生起率などを考えることで、本当にその心配や不安が合理的なものであるかを考えることができます。

→15:下向き矢印法のダウンロード