EMDRの具体的手順
EMDRの基本的な手順は以下の通りです。
- 相談者の経緯(病歴、生育暦)の聞き取り
- 準備
- 評価
- 脱感作
- 認知の植え込み
- ボディスキャン
- 終了
- 再評価
という8つのステップを行ないます。
各ステップについて
第1ステップ:相談者の経緯(病歴、生育暦)の聞き取り
カウンセラーと相談者の間に信頼関係(ラポール)を築きながら、相談者の生育暦、病歴を聞き取り、EMDRが効果的に働くか、日常生活をサポートしてくれる人がいるのか?セルフコントロールができるのか?など相談者の状況をを確認していきます。
第2ステップ:準備
EMDRの準備としてEMDRについての説明を行ったり、安全な場所の確保(イメージ上、現実場面)を行ったり、相談者の期待や不安を聞き取り、それに対する対処を検討します。
EMDRをストップするサインを決めて、いつでも自分の意思でEMDRを止めることができることを確認します。
自分で時間の使い方や対処法を選択できるというコントロール感が持てるようにサポートします。
第3ステップ:評価
外傷記憶(映像、音など)を思い出してもらいながら、そのときのネガティブな認知(例:私には何もできない)、目標となるポジティブな認知(例:私には乗り越えられる)を検討し、その信憑性(VOC:1~7)をチェックします。
また、ネガティブな感情(例:怖い)とその程度(SUD:0~10)及び、その感情が体のどこでどんな感覚として存在するのかを特定していきます。
第4ステップ:脱感作
記憶、ネガティブな認知、身体感覚に意識を向けながら、カウンセラーが左右に振る指(1秒に2往復程度の速さ)を追って、水平方向のリズミカルな眼球運動を行っていきます。(左右交互の聴覚刺激や触角刺激でも代用できます)
25往復程度(1セット)行った後に深呼吸をして、何に気づいたことはないかを聞いていきます。
相談者からの反応があれば、次はその反応意識を向けながら、次の眼球運動セット(EM)を行っていきます。
これを何度か繰り返しながら十分処理が済んだ感じを受けたら、SUD(1〜10)をチェックして、SUDが低下していることが確認します。
その時、まだSUDが低下していない場合は、未処理の関連した記憶要素などを探してEMを続けていきます。
十分にSUDが低下したら次のステップに移ります。
第5ステップ:認知の植え込み
肯定的認知を信頼し妥当と感じられる程度(VOC)を確認しながらEMを行ないながら、そのVOCを上げていきます。十分にVOC上がったら次の段階へ進みます。
第6ステップ:ボディスキャン
体の感覚に意識を向けてEMを行ないます。不快な感じを見つけて、その不快な感じに意識を向けたままEMを行い、十分処理が済んだ感じを受けたら、SUD(1〜10)をチェックして、SUDが低下していることが確認します。
その時、まだSUDが低下していない場合は、未処理の関連した不快な感じを探してEMを続けていきます。
十分にSUDが低下したら次のステップに移ります。
第7ステップ:終了
次回のカウンセリングまでのEMDR後の良い変化を積極的に探してもらうなど注意点を伝えて面談を終了します。
第8ステップ:再評価
カウンセリングでネガティブな認知や身体感覚を再評価して、必要があれば、第3ステップにもどってEMを行ないます。
注意点
EMDRはネガティブな記憶に起因する症状であれば、PTSDに限らず、恐怖症、パニック障害、幻肢痛、身体醜形恐怖、慢性疼痛など幅広い症状への対処として使われています。
ただし、広場恐怖をともなうパニック障害では、EMDRの効果は芳しくないようです。