アセスメント
相談者の問題を効果的に緩和し、解決に導くためのサポートをするためには、相談者がどんな問題を抱えているかを正確に理解して、相談者とその理解を共有していることが必要です。
症状や問題の一部にとらわれてしまうと、向き合わなければならない重大な問題が他にあることを見逃してしまうことになるかもしれないからです。
問題を正確に理解し、相談者とそれを共有するために、問題の維持・増悪している悪循環を書き出し整理する手続きをアセスメントと呼んでいます。
このアセスメントが適切に行われていることがカウンセリングの効果を大きく左右するため、初期の段階からアセスメントを慎重かつ丁寧に行い、カウンセリングの度に確認しながら、より正確で具体的にしていくことが大切です。
アセスメント情報の整理方法
認知行動療法のアセスメントでは、
- 多面的アセスメント
問題や悩み、症状を多面的に評価分析するアセスメント - 背景要因アセスメント
問題や悩み、症状の維持・悪化に影響を与えている可能性のある様々な背景に存在する要因明確にするアセスメント - 機能的アセスメント
問題を維持、増悪する要素(環境、感情、認知、行動、身体)の関連性を明確にするアセスメント
という3つの観点からアセスメントの情報を整理して、問題、悩み、症状への理解を深めていきます。
多面的アセスメントとは?
相談者の抱える問題や様々な症状を「ターゲット」として、対策を作れるレベルまで細分化していきます。
そのため、相談者の抱える問題や症状をより具体的で捉えやすいレベルまで掘り下げていきます。
- 情動的(感情・身体)側面
不安、緊張、落ち込みなど感情について、どう考え、感じているか?
身体にどんな症状が出ていて、どの程度の強さなのか?
について、より具体的で明確にしていきます。そして、相談者の主観的な強さ(感覚的な強さ)をカウンセラーと共有できるようにSUD(1~10の数値表現)などを使って数値化しながら、場面、相手、状況による感情の変化を整理していきます。 - 行動的側面
場所、状況、相手などの違いによって、相談者の行動がどう変化するかについて詳細に聞き取り、その違いを明確にしていきます。 - 認知的側面
困難を感じる場面でどのような考えが良く浮かぶか?
その場で必要とされる行動に対する自信はあるか?その強さは?
行動の結果をどのように捉えているか?
今後の見通しについてどのように考えているか?
などについて聞き取り、問題が生じている困難な状況を時間の経過に沿って、どんな考えが浮ぶのかを明確にしていきます。
多くの場合、セルフモニタリング(対象になっている場面での自分の考えを書きとめる)をして、実際の場面でどんな考えが浮かんだかを記録してもらいます。
そして記録に基づいて
- 共通して見られる考え方はどんなものか?
- 行動や気分に強い影響を及ぼしている考えは何か?
- などを明確にしていきます。
このように、多面的アセスメントでは感情、行動、認知、身体の側面から問題や悩み、症状を分析して、問題を維持・増悪させている要因を様々な角度から把握していきます。
問題の渦中にいる相談者が自分ひとりで明確にできることは、相談者自身が気づいていることだけで相談者が見逃している事や関係がないと思っていることは対象になりません。
ですから、自分ひとりでアセスメントを行っても問題が前進しないと感じる場合は、カウンセラーからの支援を受けたり、心理検査を行ったり、家族や周囲のキーパーソンからの情報収集など、異なる複数の情報源から情報を集めるようにしましょう。