【がんばり方を少しだけ変えてみる】私の世界が輝きだす「影響の輪」の話
帰り道の電車の窓に映る、少し疲れた自分の顔を見て、ふう、と小さなため息がもれる。
今日もがんばったと思う気持ちと、私、ちゃんとやれてるのかなという不安な気持ちが、心の中で交互に顔を出します。
真面目に仕事に取り組んでいるし、人間関係だって波風を立てないように気遣っている。それなのに、なぜか物事が前に進んでいないような気がしたり、誰かの言葉に心をすり減らしてしまったり。

もし、そんな風に感じているとしたら。それは決して、あなたの能力が足りないからではありません。
もしかしたら、その大切ながんばりを、ほんの少しだけ違う場所に向けてしまっているだけなのかもしれません。あなたのせいではなく、ただ、力の使いどころが違っていただけだとしたら。
この記事では、そんなあなたの心をふわりと軽くする、一つの考え方についてお話しします。
それは、自分の世界を内側からそっと輝かせるための、小さな魔法のようなお話。影響の輪という考え方です。
難しく考えなくても大丈夫。読み終わる頃にはきっと、なんだ、私にもできるかも、と思えるヒントが見つかるはずです。
あなたのエネルギー、どこに向かっていますか
少しだけ、今あなたの心の中にあるものを、思い浮かべてみてください。
たとえば、こんなことかもしれません。
「部長、なんだか機嫌が悪そう。私が何かしたかな」
「同僚のAさん、最近そけない気がする」
「来月のプレゼン、うまくできるといいな」
「今日のタスク、集中して終わらせよう」
私たちの心の中には、いつもたくさんの関心ごとが浮かんでいます。実はこの関心ごと、大きく二つの種類に分けることができるのです。
一つは、自分が影響を与えられないこと。もう一つは、自分が影響を与えられること。
[図解] 私たちの心の中にある「関心の輪」と「影響の輪」
この、自分が影響を与えられる範囲のことを「影響の輪」、そして、気になるけれど自分が影響を与えられない範囲のことを「関心の輪」と呼びます。
先ほどの例で言うと、部長の機嫌や同僚の態度は、あなたが直接影響を与えられない「関心の輪」の中のこと。一方で、プレゼンの準備をしたり、目の前のタスクに集中したりするのは、あなたの行動で変えられる「影響の輪」の中のことです。
私たちはつい、自分が影響を与えられない「関心の輪」のことばかりを考えて、心を悩ませ、エネルギーを消耗してしまいがちです。でも、そうしている間、本当に大切な、自分で未来を変えていける「影響の輪」のことは、お留守になってしまいます。
がんばり方を変える最初のステップ。それは、この二つの輪の境界線を、そっと意識してみること。
それだけで、今まで無意識に流れ出ていたエネルギーを、本当に大切なことのために使えるようになれます。
私にできることにそっと光をあてる練習
頭では二つの輪の違いがわかっていても、いざ日常に戻ると、つい「関心の輪」に心が引っ張られてしまうものです。
だから、ここで少し、心を整えるための簡単な練習をしてみましょう。用意するものは、ペンと、ノートや手帳のような書き込める紙だけ。静かな場所で、自分と向き合う時間です。
[図解] 心を整えるための3ステップ
ステップ1 まずは全部、書き出してみる
今、あなたの頭や心の中を占めている、気になっていること、悩んでいること、不安なことを、箇条書きで構わないので、全部紙に書き出してみてください。
仕事のこと、プライベートのこと、どんなに小さなことでも大丈夫。ここでは、良い悪いを判断しないで、心の中にあるものを、ただ外に出してあげるのが目的です。
ステップ2 二つの輪に仕分けてみる
書き出したリストを見ながら、一つ一つが「影響の輪(自分が影響を与えられること)」か「関心の輪(自分が影響を与えられないこと)」か、印をつけて分けてみましょう。
例えば、こんなふうに。
(関心の輪)部長の機嫌がなおらないかな
(影響の輪)次の会議で使う資料を、分かりやすく作り直す
最初はうまく分けられなくても構いません。この仕分け作業をすること自体が、自分の心の状態を客観的に見る、大切な訓練になります。
ステップ3 たった一つの小さな一歩を決める
最後に、影響の輪に仕分けたものの中から、たった一つだけ。今日か明日にできそうな、本当に小さな行動を選んでみてください。
「資料の目次だけ作ってみる」とか、「帰りに一駅だけ歩いてみる」とか、そんなことで十分です。
大切なのは、完璧を目指すことではありません。自分で決めた小さな一歩を、確かに踏み出せた、という感覚です。その小さな成功体験が、少しずつ自信という光を、あなたの中で育ててくれます。
がんばり方を変えたら見えてきた新しい景色
影響の輪に意識を向ける練習を続けても、きっと、世界が次の日にがらりと変わるわけではありません。
でも、続けていくうちに、ふとした瞬間に、心の中に小さな変化が起きていることに気づくはずです。
[図解] 「影響の輪」にエネルギーを注ぐと、輪は内側から育っていく
あれほど気になっていた上司の機嫌に、心が揺れなくなった。
周りの評価を気にすることなく、自分がやるべきだと信じる仕事に、静かに集中できるようになった。
どうせ変わらないと諦めていたことに、ほんの少しだけ、自分から働きかけてみようかな、と思えるようになった。
それは、まるで土の中で静かに育っていた種から、小さな芽が出るような感覚かもしれません。
自分が影響を与えられることにエネルギーを注ぐと、そのエネルギーは、あなたの中で自信や自己肯定感という栄養に変わります。そして、その栄養を受け取ったあなたの影響の輪は、自然と少しずつ外へと広がっていきます。
誰かに認められるためではなく、自分のためにがんばる。その穏やかで力強い感覚が、あなたの見る景色を、少しずつ、でも確実に、色鮮やかなものに変えていってくれます。
あなたの世界はあなたの手の中にある

もし、あなたがこれまで「私には能力がない」と感じていたとしたら、それは大きな誤解です。
あなたは、自分の世界を輝かせる力を、もうすでにその手の中に持っています。ただ、その力の使いどころが、少しだけ違っていただけ。
自分にはどうにもできないことで心を悩ませる代わりに、自分が影響を与えられる、ほんの小さなことに、その大切なエネルギーを使ってみてください。
大きな変化を起こす必要はありません。資料を一枚だけ整理してみる。デスクの花に水をあげる。帰り道に空を見上げて、深呼吸を一つしてみる。
そんな、あなたの一歩が、あなたの世界を、そして未来を、少しずつ動かしていきます。
あなたの世界は、いつだって、あなたから始まります。
