観察しても読み取らない

聞く、理解する、読み取る、考える、話すを同時にすることの難しさについては前回お話ししました。

人との会話が苦手だという人の多くは心理学的に言えば自己評価が低く、他者の評価を重要視する傾向があります。そして、自己評価の低い人は他者から低い評価を受けないように絶えず相手の予兆を探しながら話す癖が付いています。

例えば「自分は人から嫌われる」という自分に対する評価がある人は、「今の表情は・・嫌われちゃったかな」「話すことないなぁ・・つまらないから嫌われちゃたかなぁ」など、いつも「嫌われる予兆」に警戒しながら話しているのです。その結果、ドンドン緊張して会話をすることに集中できなくなって、思ってもいないことを言ってしまったり、反対に黙り込んでしまったり・・会話をすることができなくなってしまいます。

会話が苦手な人が緊張せずに話をするためには「相手の態度や表情を読み取らない」ことが大切です。これはとても難しいことなのですが、「相手の態度や表情を読み取る → ネガティブな気持になる → 話せなくなる」という流れがあるので「事実だけを観察する」練習をしましょう。

「目を細めた → ムカついたのかなぁ」「言葉が強くなった → 怒ったんだ」をやめて、目を細めたなぁ、言葉が強くなったなぁと思っても、その理由を考えないようにするのです。

気持ちを読み取ることについて

相手の表情や態度からある程度その人の気持ちを読み取ることは可能ですが、それをするためにはかなりの訓練が必要です。

仕草や表情、話し方などのノンバーバルといわれる言語以外のの意味を知った上で、普段のその人のノンバーバルの癖を綿密に観察して普段のノンバーバルと、その時のノンバーバルの差を読み取るというかなり高度なコミュニケーションスキルが必要です。スキル訓練を受けていない人が相手のノンバーバルからその意図を読み取ることはとても難しく、多くの場合外れています。正しく読み取れているのは数パーセントにすぎないでしょう。ですから、実際には相手は嫌な思いをしていないのに「嫌な思いをさせてしまった」と間違って読み取り、ネガティブな気持ちになって話せなくなってしまっている場合がほとんどなのです。

頭を抱える男性

順番にスキルアップ

「聞く」「理解する」「観察する」「考える」「話す」「読み取る」という会話の要素のレベルを上げていくことはとても大切ですが物事には順番があります。

まずは「聞く」「理解する」ということに集中し、それが余裕をもってできるようになったら読み取らずにただ「観察」しましょう。もし「嫌われたかな」「怒らせちゃったかな」・・頭に浮かんだ考えを払拭できなければ思い切って聞いてみるのも1つの方法です。

  • 今、怒らせちゃったように感じたんだけど、気に触ることしちゃったかな?
  • 今、表情が曇ったように見えたけど、言わないほうがいいこと言っちゃったかな?

それができたら多くの場合これまでの読み取りが間違っていたことに気づくはずです。

相手に興味を持とう

「あなたは相手に興味を持っていますか?」 「あなたは相手を知りたいと思っていますか?」

まずは相手に興味を持って知ろうとしてください。人は自分に興味を持って知ろうとしてくれる人に好意を持ちやすいのです。

自分と相手が話している時や、その人と別の人が話している時に自分がどう思われるかではなく、その人に興味をもって観察しましょう。

  • 相手がどんな色の服を着ていることが多いですか?
  • 相手がどんな時に喜ぶかを知っていますか?
  • 相手がどんなものを持っているか知っていますか?
  • 相手の口癖を知っていますか?

相手の気持ちを読み取るのはもっと後にしましょう。「聞く」「理解する」「観察する」「考える」「話す」というコミュニケーションの要素について余裕をもって実行できるようになってから、「読み取る」という特別なスキルを身につけましょう。