感情の強さを測定する
カウンセリングを行う場合、あるいは他者からの協力が必要な場合、感情の共有はとても重要な課題です。
しかし、感情はとても個人的な体験です。
ですから、感情を共有する方法として言葉使うカウンセリングでは、対象者の感情をカウンセラーが正確に理解し、共有することはとても難しいのが現実です。
そして、心理学的な知識が少ない一般の協力者(協力を要請する他者)であればなおさらです。
かなり怖い、結構怖い、めちゃくちゃ怖い、忘れられないくらい怖い・・こうした感情表現の範囲や意味合いは、個人によって大きく異なっています。
ですから、このような普段使っている言葉による表現では、カウンセラーと対象者、周囲の人間との間に、大きな認識のずれがうまれてしまうのです。
可能な範囲で感情を把握し、関係者間で共有できるように努めましょう。
不安や恐怖がもたらすもの
強い恐怖や不安を感じる時は、
- スキル能力の低下 普段は簡単にできる事ができなくなってしまいます。
- 記憶の呼び出し能力の低下 極度の不安や緊張にさらされると、大切な事を思い出せなくなったりします。
- 情報の認知、認識、意味付け、選択能力の低下 外部からの刺激(出来事など)を認識し、意味づけを行い、必要な情報を選択し、記憶する情報活動の能力にも強い影響を受け、判断能力が低下します。
人は不安や恐怖を呼び起こす脅威刺激に対して、他の刺激より注意を向ける習性があります。
多くはその人のスキーマ(個人の判断の基礎基準)に関わるものが脅威刺激になることが多いようです。
例えば、「私は差別されている」というスキーマを持っている人は、人からの評価が強く気になり、「軽蔑」といった言葉に強い注意が向いて、記憶にも残りやすくなります。
しかし、逆にその単語の前後にあった中立的な意味の言葉を見逃してしまいやすくなります。
これらの減少は、不安や恐怖についての注意バイアス、記憶バイアスなどと呼ばれています。
恐怖や不安と対象者が向き合うとき、行動の変化について観察して評価することが役に立ちます。
- 声の高低、震え、流暢さの変化
- まばたき、口の動きなどの表情の変化
- 呼吸の変化
- 手のひらや腕、首、上体、足などの不必要に繰り返される動きや仕草の変化
- なだめ行動の量の変化(髪の毛、鼻、口、耳などに触れて自分を落ち着かせようとする行為)
- 動きの不自然さの増加
などの変化を丁寧に観察することで、恐怖や不安強度や変化を客観的に評価する事が役に立つ場合も多々あります。
ただし、こうした変化は個人差大きいので、経験を積んで適切な判断ができるようになることが大切です。
また、
- 〜という行為をしたから
といった行為単体を評価するのではなく、普段の対象者の状態を観察し把握して、その変化の程度に着目する事が大切です。
自分で行う場合は録画などをして第三者的な状態から観察すると良いでしょう。