防衛機制とその機能

防衛機制とは「心の安定をはかるための自我による無意識的な防衛」です。防衛機制には、抑圧、昇華、投影、退行など様々なものがありますが自分を守るために無意識のうちに行われます。

自分で理解できないような感情や衝動が起こるのは、防衛機制によって無意識のうちに行っている心の操作の副作用かもしれません。どんなものがあるのかを理解し対策を考えていきましょう。

退行

以前の発達段階に戻ることで愛情や注目を求めたり欲求を満たそうとすること

退行の例

次のようなケースで退行(幼児の言動をとる)という行動が見られます。

  • 第二子が生まれた後第一子が退行してしまう。
  • 老人が退行してしまう。
  • アルコール依存により退行してしまう。

子どもは母親にかまって欲しい甘えたいといった感情と、友だちと遊びたいなど社会生活になじみたいという感情のバランスを微妙にとりながら生活しています。ですから24ヶ月くらいまでは母親から離れる事に対して大人が想像するよりはるかに強い不安を感じます。

この時期には親密に接する親(主に母親)からの肯定的な態度が安定した心の成長に必要なので、正面から子供と向き合わず「~をしながら」など片手間な接し方をしていると肯定的受容を親から引き出すために退行することが増えてしまいます。

4歳くらいまでは交際範囲が親に限定されやすいため妹や弟が生まれて、その世話に親がかかりきりになると赤ん坊言葉を使ったりおしゃぶりしたり特定のおもちゃやタオルに執着するなどの行動を見せることがあります。逆に年老いて自分の体が思うように動かなくなり物忘れがひどくなると指をしゃぶったりして甘えるような行動になることがあります。

子どもや老人だけなく青年期から壮年期の「大人」と呼ばれる年齢でも退行することがあります。長期間にわたって身体的・精神的・性的暴力にあい続けると、急に赤ちゃんのような言葉をしゃべったり子どもの様な行動を取ることがありますし強いプレッシャーを受け続けることで退行することがあります。

なぜ退行するのかはハッキリとは言えませんが、「受容される」「肯定される」という状態を必要な期間・強度で受けないことが大きな要因と考えられます。

退行の問題を解決するには、その原因となる欲求不満などを感じた期間よりも長い時間が必要になることが多いようです。

この傾向が強すぎる人は・・

どうやって本人が受容された状態を必要な時間(不足している分)を体験し、そのそこから生まれる受容感・肯定感・必要とされている感覚を得るかということになるでしょう。

幼児期の退行は幼稚園や友だちと遊ぶという事を通じて自然に無くなってきたり、ちょっとした親の言葉や行動(抱きしめる、優先して相手をする、声掛けを積極的にするなど)で直ることがほとんどです。しかし年齢を重ねれば重ねるほど老いや社会的な立場など、改善しにくい要素が「原因となる欲求不満」の元となっているケースが多く改善するのが難しくなってきます。