最初に行うこと
うつ病(欝病)に限らず心理カウンセリングの最初のステップは、相談者が現在どれほど苦しいのか、辛い思いをしているのかについて心理カウンセラーと相談者が共有できるようになるために、相談者の現在の状況や考え方・感じ方について心を込めて聞かせていただきます。そして、その後相談者の症状の程度に合わせて心理カウンセリングでどんなことを行うかを検討します。
程度別の取り組み
症状の程度が非常に重く考えることが辛い時
うつ病といっても重度から軽度のものまで色々な程度があります。程度が重く考えることが困難な場合、心理カウンセリングでできることは限られます。認知や行動の癖を特定し、それを変容していくためには、ある程度考えたり新しい行動に取り組むといった意欲が必要だからです。程度が重く、その意欲が全く湧いてこない状態で改善のための取り組みを行うことはとても難しいのです。ですからうつ病の程度が非常に思い場合は、医師による投薬治療を続けながら(薬によって意志力や行動力がある程度回復します)心と身体を安定させる取り組み(家族の協力を得ながら食事や環境・生活習慣などの改善など)を行います。
心理カウンセリングでできること
- 来談者中心療法をベースに話を聞かせていただいて、辛さや苦しさを共有すること
- 呼吸法などのリラクセーション法をお伝えし、できる範囲でリラックスできる時間を増やしていただくこと
- 家族の協力を得ながら環境改善や食事飲み直し、生活習慣の改善を行い回復力を向上させること
- その他相談者が望む取り組み(協力催眠、瞑想、イメージングなど)
考えたりメモを取ったりすることができる時
自分の思考について観察したり認知の癖を受け止めたりすることができるので、相談者の認知や行動を見直すことでうつ状態を増幅しやすい考え方や、その元になっている社会的・個人的なルールについて検討することでうつ状態の改善に取り組んでいきます。
心理カウンセリングでできること
- 認知行動療法を中心とした認知・行動の修正
- 心身を休息させるスキルを身につけ回復力を向上させること(呼吸法、筋弛緩法、自立訓練法など)
- 身体的心理アプローチ(フォーカシングなど)を通して自分では気づけなかった想いを明確にしていくこと
- その他相談者が望む取り組み(ゲシュタルト療法、協力催眠、瞑想、イメージングなど)
ある程度回復し良好な状態の時
ある程度回復し考え方や行動が積極的になってきたら、今後うつ状態を引起す可能性がある場面などに対処するスキルを向上させていきます。薬物療法のみで回復した方のうつ病の再発率は65%程度とかなり高い確率です。ストレスが大きくなる場面への対処法をシッカリと身につけていただいて再発の予防に取り組みます。
心理カウンセリングでできること
-
- 認知行動療法よって修正した認知・行動を定着させること
- 今後予想されるストレスフルな場面への対処の準備をすること
- 必要と思われるスキルの向上させること
- コミュニケーション、アサーション(自己主張)、メンタルの強化、リラクセーションなどのスキルを向上させること
- イメージング、協力催眠、瞑想などを用いた潜在意識・感情コントロールスキルを向上させること
- その他、相談者様の望む取り組みをすること
- 心理カウンセリングの回数を心理カウンセラーと相談しながら徐々に減らして、新たな問題が生じたときに自分ひとりで対処できるようになるためのサポートをしながら心理カウンセリングの終結を目指します。
まとめ
心理カウンセリングは相談者と心理カウンセラーの協力関係に基づいて成立するものです。ですから必ずこの方法で、この手順で行わなければならないというものではありません。色々な心理療法の中からうつ病の回復に役立つ方法をサポーターである心理カウンセラーが提案していきますので、それを相談者様が選択・実践して回復を目指していきます。より効果的な心理カウンセリングにするために共に取り組んでいきましょう。
重度の状態になってからの回復には数年単位での時間が回復に必要な場合もありますので、なるべく早い段階で専門家に見てもらうようにしてください。