うつ病は気分障害の一種で抑うつや不安・焦燥・精神活動の低下・食欲の低下・不眠などを特徴とする心の病気です。国際的に権威がある診断基準(DSM-ⅣとICD-10)では気分障害に分類されます。気分障害とは落ち込んだ気分が続いたり、普通ではない気分の高揚状態が続いて生活上何らかの障害が起きている状態で、一般的に知られている病名で言えばうつ病や躁鬱病のことを指します。
脳の機能障害
うつ病や躁鬱病には様々なパターンがあり、脳内のモノアミン(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど)といわれている系統の神経伝達物質の極端な変化によっていき起こされる脳の機能障害と考えられています。最近まで心の病気とされてきましたが、現在では脳内に不足している下記のような神経伝達物質の不足が原因と捉え、それらを促進させる薬物療法などが主流になってきています。
しかし薬物療法だけで完治しないケースも多く、心理カウンセリングやアサーショントレーニングなどのスキル訓練など、その他のアプローチを併用することが必要であると考えられています。
健康なライフスタイルや効果的なストレスコーピング(メンタルタフネス)、社会的支援を得られるようにすることも大切
うつ病はあまり生活に支障をきたさないような軽症例から、自殺企図など生命にかかわる重症例まで存在します。「最近不調だ」「仕事で行き詰っている」「成果が上がらないで行き詰っている」などというときは、軽度のうつ病にかかってる可能性もあります。うつ病には日内変動が見られ、朝方や午前中に症状が強く出る人が多いようです。男女比では、男性より女性のほうがうつ病になりやすいといわれています。
うつ病の診断基準は、2つの主要症状が基本となります。それは、「抑うつ気分」と「興味・喜び」の喪失です。
抑うつ気分とは気分の落ち込みや何をしても晴れない気分・空虚感・悲しさなどです。興味・喜びの喪失とは以前まで楽しめていたことにも楽しみを見出せなくなって感情が麻痺した状態をいいます。この2つの主要症状のいずれかがうつ病を診断するために必須の症状とされています。
これらの主要症状に加えて抑うつ気分と類似した症状として自分には何の価値もないと感じる無価値感、自殺念慮・希死念慮などがあります。「気分が落ち込んで嫌な毎日が続き、自分には存在している価値などなく、死にたいと思う」という訴えということになるでしょう。
興味・喜びの喪失と類似した症状としては、気力の低下と易疲労性、集中力・思考力・決断力の低下があります。「何をしても面白くなく物事にとりかかる気力がなくなり、何もしていないのに疲れてしまい、考えがまとまらず小さな物事さえも決断できない」という訴えとなるでしょう。
さらに、これらの精神症状に加えて身体的症状として、食欲・体重・睡眠・身体的活動性の4つの領域で明らかな減少、または増加が生じてきます。
訴えとしては「食欲がなく体重も減り、眠れなくてイライラしてじっとしていられない」、もしくは「急に食欲がでて食べ過ぎになり、いつも眠たくて寝てばかりいて身体を動かせない」というものです。このような状態が2週間以上続いたら専門家に相談することをお勧めします。