アサーショントレーニングの具体的やり方
アサーショントレーニングはウォルピが行動療法の1技法として開発したもので、主張行動を新しく学習して身につけたり発展させたりするためのトレーニングです。主張訓練法や自己主張訓練とも呼ばれています。主張行動とは「自分の考えや感情を表現しつつ、相手の感情や考えを認め、否定しせず、折り合いをつけること」をいいます。
アサーショントレーニングのステップ
- 主張行動の理解と問題になる場面について情報収集
- 問題を引き起こす行動、認知の確認と検討
- 目標とする主張行動のシナリオ作成
- 主張行動のモデル提示と確認(フィードバック)
- ロールプレイ実施とその確認(フィードバック)③~⑤、必要な場合は②~⑤、①~⑤をの繰り返し
- 新しい主張行動定着のための補足的訓練
- 実際の場面での主張行動訓練と新しい主張行動の定着度の評価
1.主張行動の理解と問題になる場面について情報収集
主張行動がどんなもので、それができるようになることで、どんな良いことがあるのかを身近で具体例を挙げながら説明します。相談者自身が主張行動の大切さ、必要性を深く理解することでアサーショントレーニングの効果が高まります。また相談者が主張行動をとることが難しいと感じる場面について聞き取り、それぞれの具体的場面で、どの程度主張行動ができないのかを明らかにしていきます。
2.問題を引き起こす行動・認知の確認と検討
相談者の行動や考え方の中で主張行動をとることを阻んでいるものを明らかにします。その行動や考え方について検討します。そして合理的で状況に適した行動や考え方を見つけられるように援助していきます。たとえば「誰からも好かれなければならない」という考え方が主張行動を妨げている場合、「できるだけ多くの人から好かれたい」などの対人関係について緊張を生みにくい考え方を探していきます。また緊張が強い場合は緊張を緩和するためのトレーニングも行います。
3.目標とする主張行動のシナリオ作成
1で明らかにした問題場面でどんな主張行動を取れたら良いかを検討し、相談者と一緒にシナリオを作っていきます。相談者にとって意味のある現実味のあるシナリオを作成することでトレーニングの効果が高まります。
4.主張行動のモデル提示と確認(フィードバック)
相談者に主張行動を行うためのモデルを見せます。カウンセラーが相談者の役、相談者が問題場面で主張行動をする相手役を演じてロールプレイをします。カウンセラーが相談者の役をすることで主張行動のモデル(手本)となるのです。モデルを用いたこうした方法をモデリングと呼びますが、モデリングには実際の場面を見るライブ・モデリングと、ビデオなどを使ってモデルを見せる観察モデリングがあります。モデリングを取り入れることは新しい主張行動を検討する上でとても有効です。例えば下記の表に示したような「適切な声量」などを言葉で伝えることとても難しいからです。
5.ロールプレイ実施とその確認(フィードバック)
相談者が相談者の役をカウンセラーが問題場面で主張行動をする相手役を演じてロールプレイを行います。相談者がロールプレイで主張行動をとってみることで、実際の場面で感じる不安や緊張を緩和できます。カウンセラーは相談者の取った主張行動について、よかった点を積極的に伝えた上、改善すべき点についても情報を提供します。(フィードバック)
6.新しい主張行動定着のための補足的訓練
カウンセリングで練習した主張行動を現実の生活でおこる場面におていも行えるように、その障害となりそうな要因を洗い出し、それに対処できるよう準備します。
7.実際の場面での主張行動訓練と新しい主張行動の定着度の評価
カウンセリングで練習した主張行動を現実の生活でおこる場面で実施します。ホームワークとして現実の生活でおこる場面で実施して、適切に実施できているかの評価を行います。
主張型別のコミュニケーションの要素
主張的 |
非主張的 |
攻撃的 |
|
アイコンコンタクト |
話す時、相手と視線を合わせる |
話す時、相手から視線をそらす |
話す時、相手を凝視する |
表情 |
話の内容にふさわしい |
話の内容に関わらず気弱、無表情 |
話の内容に関わらず敵意に満ちた、睨む |
ジェスチャー |
ほどよい:話の内容にふさわしい |
ない 話の内容にふさわしくない |
過剰、おおげさ |
姿勢 |
相手に向く、適切な距離 相手の方へ少し身体を傾ける |
オドオド、相手から離れすぎる 相手と反対の方へ体を傾ける |
相手に向く 相手に近すぎたり、遠すぎる 相手の方や反対の方に体を傾けすぎる |
声の質 |
しっかりした(自信にあふれた):適切な声量:適切な発声 |
申し訳なさそうな:ささやくような:単調な |
熱がこもりすぎた:叫ぶ:街頭演説のような |