弁証法的行動療法とは

弁証法的行動療法(Dialectical Behavior Therapy:DBT)は、マーシャ・リネハンによってに開発された境界性パーソナリティ障害(Borderline Personality Disorder:BPD)の代表的診断指標になっている自殺行動(リストカットetc)などの意図的、自己破壊的な問題行動に対て有効性の実証された認知行動療法的技法です。
注目・注意(小)DBTは自殺類似行動だけでなく、抑うつ、不安、怒り、解離など社会的適応問題に対しても効果が高い技法です。
自殺行動の再発率の減少、対人関係の改善など長期的効果があることが報告されています。

また、近年ではBPDだけでなく摂食障害、心的外傷後ストレス障害(Posttraumatic Stress Disorder:PTSD)などにも用いられることが増えています。

弁証法的行動療法理論と弁証法

DBTは弁証法に基づいています。
弁証法とは考え方の一つの型で、形式論理学で「AはAである」という同一律を基本に置いていて、「AでありかつAでない」という矛盾が起こればそれは偽だとするのに対し、矛盾を偽だとは決めつけず、物の対立・矛盾を通して、その統一により一層高い境地に進もうと考えます。

定立(「正」「自」「テーゼ」)Aに対して、その否定である反立(「反」「他」「アンチテーゼ」)非Aが起こって、この否定・矛盾を通して更に高い立場たる総合(「合」「ジンテーゼ」)に移と考えるのです。
この総合作用を「アウフヘーベン」(「止揚」「揚棄」)といっています。

例えば、極端な2分法的な思考のクセがあって「良いか」か「悪い」、「白」か「黒」、「できた」か「できないか」などの極端な分類のをする人について、2つの両極端な思考のどちらかに固執したことによって(テーゼ)、それに反する立場(アンチテーゼ)で受け入れられなくなってしまったことでアフフヘーベンが起こらず、ジンテーゼにたどり着けなかったため、受け入れられない部分もありながらもお互いを理解し、受容しすることができなくなったと考えます。

これによって全ての出来事が固定化してしまって、複雑、多面的、矛盾といった観念を持つことができなくなってしまっていると考えるのです。

対立する男性DBTでは、このようなに問題を弁証法的な失敗によって生じた結果としてとらえて、相談者の認知および行動について弁証法的な統合を目指していますが、これは相反する出来事、状態、立場、存在などの存在を認めることで、人格の中に個性という模様作っていくことができるのだということを受け入れられるようにサポートすることを意味します。

また、介入戦略についてもカウンセラーと相談者の相互作用に弁証法が組み込まれています。
例えば、DBTでは相談者の変化を促す一方で、その時のありのままの自分を受容することも要求していきます。

「受容」と「変化」のバランスにが大切なのです。
サポート役であるカウンセラーは相談者に対して不適切な行動をとってしまう原因を分析して説明し、その行動をとるしかない相談者を認めることで、相談者が現在の自分の状況を「受容」できるようサポートしていきます。

それと同時進行で相談者の不適切な行動に対して行動分析を実施し、解決策を話し合い、相談者の「変化」をサポートしていくのです。