スキーマによる解釈
何か出来事があった時前向きに考える人もいれば、その出来事から立ち直れないと感じてしまう人もいます。この違いはどこから来るのでしょうか?
人はそれぞれ異なった自分や他人、社会に対する判断基準を持っています。これをスキーマと呼びます。
人が育った環境や経験によって全く違うのですがさまざまな出来事をスキーマを通して認識し、それと合致するような結論を出そうとします。
例えば「自分は人から愛されない」というスキーマを持っていた場合、他人からとても好意的な態度を取られても、「きっと立場上ああするしかなかったんだ」といった具合にその出来事を割り引いて考え、記憶から除外してしまいます。そして他人から冷たい態度を取られたりすると「やっぱり私は愛されないんだ」と自分のスキーマが証明されたように感じ、その記憶を蓄え、さらにそのスキーマを強めていきます。そして、その考えに見合った行動を繰り返してしまいます。
自分の考えを見直す場合、「自分がなぜそんな風に思ったのか?」という理由を理解する(その時の思考の元になったスキーマやそこから派生したルール)ことが役に立ちます。
下向き矢印法
その時に役立つのが下向き矢印法です。その出来事について具体的に書き込んで、最終的にどう考えたのかを書き出してみましょう。その後以下の質問に答えながら一段深い自分の心を探ってみてください。
活用例
Bさんの状況
Aさんにあいさつをしたら返事もせず行ってしまった。
下向き矢印法
Aさんは私を嫌いなんだ → 私を嫌いじゃなかったら挨拶を返すはず → Aさんのお友達、Bさん、Cさん、Dさんにも私は嫌われているかもしれない→職場の人たちにみんなに嫌われているかもしれない → 一人ぼっちになってしまうかも → 私は人から愛されない
上記の例では「私は人から愛されない」というスキーマがあるため、「Aさんがあいさつを返さなかった」という事実を「Aさんは私を嫌いなんだ」という思考に結びつけてしまっています。
もし「私はみんなに愛されている」というスキーマを持っていたら、きっとこれ以外の思考を導き出しているはずです。
(聞こえなかったかな?、何か家で嫌なことがあったのかな?、考え事でもあったのかな?etc)
こんな風に自分のスキーマやルールを理解できるとスキーマやルールに反する事実を探すことが可能となるので、自分にとってうまく機能していないスキーマやルールを調整する基盤をつくることができます。
不安や心配などを分析するのにも使えます。
Cさんの状況
旅行へ行く前に妻が容易に手間取りイライラして怒りが抑えられない(実際は少し時間に余裕があります)
下向き矢印法
このままだったら遅刻してしまう → 車が渋滞してたら時間がかかる(30%) → 電車に乗り遅れてしまう(10%) → 待ち合わせの〇〇ご夫妻はきっと先に来てイライラしているだろう(10%) → そんな私たちを見たらきっと軽蔑するだろう(5%) → 時間を守れない人間はダメな人間だと思われるに違いない(20%) → これからもダメな人間だと思われて過ごさなくてはいけない(30%) → 人から見下されて生きていくことなんかできない (カッコ内は発生確率)
このままの状況で人から見下されていかなくてはならない確率は、0.3×0.1×0.1×0.05×0.2×0.3=0.000009 0.0009%となります。
1つの思考が生まれるまでにいくつかの思考が組み合わさっている場合は、その生起率などを考えることで本当にその心配や不安が合理的なものであるかを考えることができます。