ストレス免疫訓練法とは?
心の健康(メンタルヘルス)を考える上で、ストレスへの免疫(耐性)について理解し、それを高めることは重要な課題です。
そのための方法の一つとしてストレス免疫訓練法(Stress Inoculation Training:SIT)があります。
SITは、認知行動療法の代表的な技法のひとつですが、特定の単一の技法のことではなく、様々な技法がパッケージ化されたものを言います。
SITの目的は様々なストレス状況に対する不適応な反応(認知的反応、行動的反応)を緩和することです。
つまり、ストレスに状況に対する「対処技術」を提供するというなのです。
体に対する医療において、病気に対する「免疫力」を向上させることと同じように、様々なストレス状況に接し、ストレス状況に対する「対処技術」を身につけることで、ストレスに対する免疫力を向上させるのです。
カウンセラーなどの支援者の元でストレスを適度にコントロールしながら、新しいストレスへの対処技術習得の練習を行うことで、その人のストレスに対する抵抗力、すなわち「免疫」が強められるという考え方に基づいています。
ストレス免疫訓練法で大切なことは、さらされるストレスが「参加者を圧倒するほどに強いレベルのものであってはならない」ということです。
カウンセラーなどの支援者の元で新しく身につけた対処技術を使って、そのストレス状況を乗り切ることができたという体験を繰り返すために、「適度の」レベルのストレスを選択して、学習性有効感(経験の基づく自信)を身につけることが大切なのです。
こうした体験を繰り返すことで、ストレスに対処する自信が育まれ、さらに強いストレスにさらされても、ストレスを効果的に処理できる技術と、それに対処する自信が強化されていくのです。
つまり、SITを行うことで、目の前のストレス状況に対処するだけでなく、今後直面する様々なストレス状況にも対処することができるように、参加者のストレス対処技術(ストレスコーピングスキル)を向上させることができるのです。
SITの3つの段階
- ストレスの概念の把握の段階
- 技術の獲得とリハーサルの段階
- 適用とフォロースルー(応用と継続)の段階
本来SITの対象は、不安や恐怖症の患者、怒りが抑えられない患者、心因性の痛みを持つ患者、やけどの患者、レイプの被害者やアルコール常用癖の患者などだったのですが、徐々にストレスの予防法として、手術や痛みを伴う医学的検査を受ける前の患者、警察官、軍関係者にも用いられるようになっていき、現在では一般の職場や学校場面にも実施されるようになっています。