感情処理のステップとして、
- 特定の感情を明確にする
- 「感情」を産み出す思考を明確にする
- 自分がどうなりたいかを明確にする
- なりたい自分になるための方法を明確にする
という4つのステップが必要です。
この4つのステップを効果的に行うためには、自分の感情をどのように理解しているか(メタ感情といいます)について、より深く知る必要があります。
感情に焦点を当てる
苦しさや辛さが維持/増悪している時、認知療法では自動思考、信念について再検討しますが、今回は感情に焦点を当てるアプローチについて考えてみたいと思います。
このアプローチでは、感情を「感情スキーマ」という概念の構成要素のひとつとして扱います。
ですから、個のアプローチでは、認知的内容(自動思考や信念)も「感情スキーマ」に含まれているものと考えます。
また、感情は1次感情と2次感情を区別して考えることになります。
1次感情とは基礎的な感情で、2次感情は、1次感情をわからないようにしたり、自分を守るために感じるハッキリした感情のことをいいます。
1次感情(例えば悲しみ)を感じたり、認めるより、2次感情(例えば怒り)を感じるほうが、ずっとずっと楽なのです。
また、感情を手段として利用する人もいます。他者から何かの反応を引き出すために感情出すのです。
例えば、相手に罪悪感を感じさせようとして、泣くという感情を表に出すのです。
このように、感情は一般に考えられているよりずっと複雑なのです。
ですから、自分の感情を明確にするためには知識やトレーニングが必要なのです。
多層的で複雑な感情を1つ1つ明確にして、理解することで、辛さや苦しさといったあまり感じたくない感情が継続する場合でも対処できるようになるのです。
感情スキーマを明確にするステップ
- 感情に名前をつける
メタファーという技術です。
名前を付けることである程度距離を取って感情と付き合うことができるようになります。 - 身体感覚に意識する
体の感覚に意識を向けることでその感覚に結びついた感情や思考を見つけやすくなります。 - 感情に集中して、その感情と共に過ごす
見つけた感情とともに過ごすことでその感情を冷静に受け止めることができるようになります。 - 感情に伴う思考を明確にする
思考を言葉として明文化することで、より感情と思考と感覚の結びつきが理解しやすくなります。 - 感情に含まれる情報を明確にする
その感情に含まれる感覚、イメージなどを明確にし、より鮮明なものにしていきます。 - 感情記録をつける
記録をつけることで感情の変化に気づきやすくなります。 - 感情に触れようとする時に生じる妨害について明確にする
感情に触れようとする時、様々な妨害が生じる場合があります。
ボーっとしたり、集中力がなくなったり・・(解離といいます) - 感情が伝えようとしていることを明確にする
感情は自分では気づけない様々な思いを明確にしてくれるメッセンジャーでもあるのです。 - 自分が自分自身に対して求めている事を明確にする
感情に含まれるメッセージに気づくことで自分自身が本当にしたい事、求めていることを見つけやすくなります。
継続する苦しさや辛さと言ったあまり感じたくない感情を扱う場合、感情に焦点をあてることはとても有効です。
というのは、感情に焦点を当てることで、それぞれの感情スキーマに含まれる認知的要素を明確にする事にも役立つからです。
練習方法
- 感情スキーマを明確にするステップを行います。
フォーカシングを用いると良いでしょう。 - 「感情を記録する」を利用して感情を記録します。
以下の事について検討してみましょう
- どんな問題について話をするとき、強い感情を感じますか?
- その感情を強く感じる問題を典型的に示している状況、その象徴となっている状況を思い浮かべましょう。
そのような状況に関わる記憶やイメージを思い浮かべましょう。
そして、その時生じる感情に意識を向けましょう。
それに伴って生じる身体感覚を繊細に感じてみてください。
呼吸はどうなっていますか?
身体はどんな感じですか?
思考やイメージはどんなものが浮かんでいますか?
何かを言いたくなったり、尋ねたくなったり、やってみたくなったりする事はありますか?
感情に触れようとするのを邪魔してくるものがありますか?
もしあるなら、それはどうやって自分の感情を感じたり、感情を扱ったりすることを妨害しようとしますか? - その時々に感じていることを明確にすることが重要です。感情はとても大切なものだからです。
自分の感情に注目し、「感情を記録する」を使って、感情の変化を記録してみましょう。
記録することで経験している感情のゆれ幅について検証することができるようになります。
また、何かの感情に集中しようとした時、妨害するような心の動きがあったら、それについても書き留めてください。
何らかの感情を自分で阻止しようとしている事に気づいたら、それについて記録しましょう。
感情にアプローチすることは不合理だと感じる人もいるかもしれません。
思考を合理的に調整することで、感情や行動をコントロールするべきだと考えているからでしょう。
しかし、感情を排除する事は「合理的」ではなく、感情をより扱いやすくする事が新たな合理性を産み出すのです。
感情とは「自分が今、何を必要としているか」について教えてくれる存在なのです。
また、感情には思考が含まれているのですから、感情を扱うことで思考も扱いやすくなるのです。
感情に注目することは、辛い感情を再体験するだけで無駄だと感じたり、その感情に呑み込まれてしまうのではないかと恐れる人もいるでしょう。
しかし、感情の強さは持続するものではありません。
感じ切り、ピークを迎えることで減少していくものなのです。
逆に、感じ切らずに目をそらすことで、その感情は継続してしまうものだということも知っておいてください。
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