防衛機制とその機能

防衛機制とは「心の安定をはかるための自我による無意識的な防衛」です。防衛機制には、抑圧、昇華、投影、退行など様々なものがありますが自分を守るために無意識のうちに行われます。

自分で理解できないような感情や衝動が起こるのは、防衛機制によって無意識のうちに行っている心の操作の副作用かもしれません。どんなものがあるのかを理解し対策を考えていきましょう。

抑制

不安を感じるような物事について意識的に考えないようにしたり、願っても手に入れることが難しいと思われることについて考えるのを避けたりすること

抑制の例
  • 嫌なことは忘れて楽しく考えよう
  • 悪いことは考えないで良い面だけを見て行こう
  • 楽しいイメージに浸って逃げる

こうした考え方は良く使われる問題の解決のための方法で、こうすることで様々な場面で不快な状態を脱出することができます。

抑圧

「抑制」が無意識的にいき過ぎて行われると「抑圧」になります。

抑圧とは

自分ではどうにもならなくて受け入れられない衝動を感じたり体験した時、その衝動や体験を無意識の中に押し込めて感じたり思い出せない状況を作って自分を守ろうとする心の防衛手段を抑圧といいます。

「嫌なこと」「悪いこと」の程度があまりにも強くて無意識のうちに行われる抑圧を行うと、気づかないうちに心理的な極度の緊張やストレスの原因となる上、通常とは異なる問題を引き起こす判断や行為として現れてしまうことがあります。

抑圧

抑圧の事例

いじめ

いじめられている子は自分がいじめの対象となっていることを認めないという傾向があります。

「ジュース買ってこいよ」「カバン持てよ」など、やりたくないことを日常的に押し付けられている子は、元気に返事したり友達の様にふざけ合っている様な行動をして嫌だという態度を表に出さなくなります。ですから、周りから見て「いじめられている」とは気付かないことが多いのです。

いじめの抑圧の例
  • 自分はいじめられていない
  • 友達なんだ

子供自身も抑圧に気づかず無意識のうちに「いじめられている」という気持ちを心の中に押し込んで、自分の心の中の辛くて苦しい感情から自分を守っているのです。

しかし抑圧することで「いじめられている時の自分の心の状態」がわからなくなって、正常な判断が出来なくなってしまうことで異常な行動や言動をするようになってしまうこともあるので注意が必要です。

虐待

親から日常的に暴力を受け体にあざが沢山ある子供に理由を聞いても答えてくれません。

虐待
自分自身の心の中に虐待の経験を抑圧しているため自分の行動や衝動が理解できず言葉にできないのです。中には「抑圧」した気持ちを「自分が悪いんだ」という考えで蓋をしてしまい自分を責めているようなケースもあります。
「抑圧」をおこなっていると無意識のうちに気持ちを押し込んでいるので、外から見ても、自分自身でもなぜ行動や衝動に変化があったり問題が起こっているのかが分かりにくくなってしまいます。

自分を許せないような秘密を抱えていて「抑圧」することで自分を守っていると、人と接していると自分で理解できないような衝動や感情や行動が生まれるようになってしまいます。

災害や事件

目の前で起きた悲惨な事故や大震災等の自然災害、殺人現場を偶然目撃するなどの体験した人も、その時の恐怖や衝撃が意識に登らせないように「抑圧」して自分を守ることもあります。

事故や災害、事件の時の事の前後を含めて忘れて思い出せなくなることが多いですが、何気ない日常で突然恐怖心が湧き上がってきたり叫びたくなったり・・衝動、感情、行動が起きるようになります。

抑圧された心理状態に気付いて、それに対する別の見方を見つけ受け入れ認めていくことで問題になっている衝動・感情・行動が起きなくなっていきます。

抑圧された不快な記憶や経験を思い出すことや意識することは、とても辛いことですが自分の心の中を意識し受け入れていくことが時には必要です。