苦しみを生む自動思考

自動思考は認知行動療法の用語で、何かの折につけ自動的に頭に浮かんでくる考えのことです。この考え方のパターンが人の言動の基本になっていて、それが不利益をもたらす場合は見直す必要があります。強すぎると不利益をもたらしてしまう典型的な自動思考のパターンを紹介していきたいと思います。

べき思考

物事を単に「どうであるか」という視点でとらえるのではなく、「どうあるべきか」という視点からとらえること。

べき思考の例
  • 怒りは感じるべきではない人間として持ってはいけない悪い感情だ

べき思考

「~するべき」「~あるべき」という考え方は、ある社会やグループある時代では当然で当たり前です。しかし、その社会やグループ、ある時代を出てしまえば全く必要のないものであったりします。例えばある宗教では「豚肉を食べてはいけない」という戒律がありますが、日本人に多い仏教徒にとっては、その戒律は大きな意味を持ちません。江戸時代にマゲを結うのは男性とて当たり前のものでしたが、現代でマゲを結うのは特殊な職業の人だけです。

つまり「べき思考」は、どの社会やグループにいつ所属しているかということによって意味合いが大きく変わるものだということです。ですから子供時代に親や先生に教えられた「~べき」という考えが大人になって暮らしを不快にするものに変わっているのであれば、もう一度見直してみると良いでしょう。

また例文にあるように「怒り」などの負の感情を感じてはいけないと考えている人も多いようですが、もし人間に「怒り」がなかったとしたら外敵から身を守る行動をとらなくなってしまうでしょう。つまり怒り、悲しみ、憎しみといった一般に「負の感情」と呼ばれるものも、実は人間に必要であるから備わっているわけです。

チェック3

ただし怒りを感じたからすぐに殴りかかっり相手を傷つけてしまえば警察に捕まったり自分の生活に悪影響を及ぼすかもしれません。つまり「負の感情」は感じることが問題ではなく、その感情をどう使うかが問題なのです。怒りや憎しみという感情が芽生えると体の中では衝動というエネルギーが生まれます。そのエネルギーを人を傷つけるため使用すれば自分の生活に悪影響を及ぼします。

しかし、そのエネルギーをスポーツに使えば体力がつきます。勉強に没頭すれば新しい知識が身につきます。「負の感情」をエネルギーとしてとらえ、使い方を間違えなければ自分にとって有益なものをもたらせてくれるのです。

「~べき」という考え方は所属する社会・グループ。時代などによって意味が異なり、捉え方や使用方法を考えることで有益にも不利益にもなります。
「べき思考」が強すぎると自分や周りの人の言動に制限がかかり過ぎて行きにくくなってしまいます。

こうした傾向が強い人は・・

事実を自分が判断したことに対する根拠や根拠の質について検討し、べき思考を見直してみると良いでしょう。